木造住宅だと地震に弱い?「地震に対して安全」とは?

家を建てるなら、やっぱり木の香りがする木造住宅が良いよね。でも、地震が起こった時に、大きな被害が報道されてる。こういうのを見る度に、

「木造住宅って地震に弱いんじゃないのか?」

という気持ちになりますよね。

この記事では木造住宅の建築基準法上の地震への考え方について、一級建築士としての立場からお伝えします。

この記事を読めば、現時点で、もっとも地震に対して強い木造住宅をつくるにはどういう計算を採用するべきなのか?わかります。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

「地震に対して安全な家」の定義とは

「地震に対して安全な家」と聞いて、どんな状態を思い浮かべますか?

多くの人は、

「震度7の地震が来ても、余震が来ても壊れることなく、家族の命や物を守り、その後も住み続けられること」

そんなイメージするのではないでしょうか?

ですが、実は法律(=建築基準法)では、そこまで求められていないのが現状です。

建築基準法で求められているのは、ざっくり言うと

「地震の本震が来た際に、倒壊しないで人間の命を守ること。」

ですので、1度目の地震で傾いてしまって、その後住めなくなったとしても、法律上は「地震に対して安全な家」ということになります。

法律=建築基準法が求めている計算内容

ここで、建築基準法の目的を確認してみましょう。

第一条(目的)
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する「最低の基準」を定めて、国民の生命、健康、及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。

「最初の1回目の地震でとにかく倒壊しないで、命を守ること」を、建築物として最低限の基準と定めています。

ですから、一般のみなさんが考える「震度7の地震が2回きても倒壊しないで、その後も住み続けられる」というのは、実は基準法よりももっとハイレベルな要求なんです。

ですから、最低限の基準を満たした上で、そこから先は建築士が地域の特性や、建物の規模などに合わせて設計していくことが必要になります。

でも、多くの人が、建築基準法(最低基準)を守ること=要望を満たすのに十分な基準 だと思いこんでしまっていることが、大きな勘違いなんです。

地震に対して安全な木造住宅を作る最低基準

一般的に住宅というのは、木造2階建て、あるいは平屋というのが多いと思います。

これらは構造計算をしないで建っているものがとても多いのが現状です。

・木造
・2階建て
・軒の高さ9m以下
・最高高さ13m以下
・延床面積500㎡以下

この条件にあてはまる建物は、建築基準法上「四号建築物」と呼ばれ、詳細な構造計算をしなくてもよいことになっています。

構造計算をしない代わりに、守るべき最低基準が決められています。

そして、この基準は、「3つの簡易的な計算」と「8つの材料の仕様を満たしていること」この2つの条件で成り立っています。

3つの簡易な計算とは

四号建物で計算して確かめるのは以下の3つです。

1)壁量計算:地震に抵抗できる筋交いや壁の量が足りているかどうか?
2)四分割法:地震に抵抗できる壁が、バランス良く配置されているかどうか?
3)N値計算:柱の柱頭・柱脚が適切な強度の接合方法で繋がれているかどうか?

8つの仕様規定

「仕様規定」というのは、柱や梁、筋かいや基礎など、構造物の材料や工法、寸法を具体的に決めている規定のことです。

この寸法を守ることで最低限の強度が確保できるいうイメージですね。

1)基礎の仕様
2)屋根ふき材等の緊結
3)土台と基礎の緊結
4)柱の小径等
5)横架材の欠込み
6)筋かいの仕様
7)火打材の設置
8)部材の品質と耐久性の確認

この、3つの簡易計算で確認して、8つの仕様規定を守ることで、建物として最低限の強度を確保している。というのが、現在多くの木造住宅の現状です。

地震に対して安全な木造住宅を作るもっと上の基準

では、地震がきても倒壊することなく、その後も住み続けるためにはどうしたらいいのか?

それには、当然ですがもっと基準を高くすることが必要です。ではそのもっと高い基準とは何か? ご紹介介したいと思います。

構造の安全確認項目

木造住宅において、構造で安全を確認する項目は3つあります。

壁量等の検討

・壁量計算
・耐力壁の配置バランス
・柱頭柱脚の接合方法
・(床倍率)

部材の検討

・横架材、柱の設計
・たるき、母屋、棟木等の設計

地盤・基礎検討

・地盤調査
・地盤補強設計
・基礎設計

構造の安全確認方法

構造の安全確認方法は3つあります。

①仕様規定
対象:全ての木造建築物
規定される法律:建築基準法
確認項目:壁量などの検討

これは上記でご紹介した方法で、これまで一般的な木造2階建てまでの住宅で求められている基準。です。

②性能表示計算(耐震等級・耐風等級など)
対象:長期優良住宅・性能評価住宅
規定される法律:住宅品質確保促進法(通称:品確法)
確認項目:壁量等の検討(床倍率含む)・部材検討・基礎設計

これは、①よりも高い基準。わかりやすく言うと、地震に対する壊れにくさを耐震等級1~3で表示します。

耐震等級とは?

地震に対する性能を表す等級です。計算する時に、地震力を通常の1.25倍や、1.5倍にして考慮することで、より性能が高い建物になります。

耐震等級1・・・建築基準法の耐震性能(建築基準法の最低基準)
耐震等級2・・・建築基準法の耐震性能の1.25倍
耐震等級3・・・建築基準法の耐震性能の1.5倍

長くなるので、詳細は別記事にて。

③構造計算(許容応力度計算など)
対象:木造3階建てなど
規定される法律:建築基準法

もっとも安全性が高くなる。

地震に対して安全な木造住宅を作る今の日本での最高基準

現時点(2020年)の日本で、地震に対して安全な木造住宅を作る最高基準は

・性能表示計算をする
・構造計算をする
・「耐震等級3」までやる! 

この3つをおさえることになります。

これから家を建てる時に考慮するべきこと

日本は地震大国で、大きな災害も近年頻発しています。

むずかしいように感じて敬遠しがちですが、大切な命と財産を守るために、

・どのような基準を満たしているのか?
・等級3をとっているのか?構造計算をしているのか?

確認してください。せっかくお金と時間をかけて家を建てるんですから、命と生活を守れる家を建てましょう!

投稿者プロフィール

トリノメ
トリノメ
トリノメ建築設計の広報担当。ウェブサイト作成や記事の執筆を行っています。「小学5年生でも理解できるわかりやすい記事」を目指しています。